福岡県と大分県の県境に位置する小石原(こいしはら)。
江戸時代から実用陶器が作られてきた土地です。
かつては、「皿山」と呼ばれる地区に10軒ほどの窯元が軒を連ねる、
小鹿田とそう変わらない、半農半陶の小さな焼き物の産地でした。
昭和30年頃から民藝運動の高まりに呼応して窯元が急増、
現在は40軒あまりの窯元があります。
小石原と小鹿田とは、山を隔てて直線距離で9kmほどしか離れていません。
小石原から陶工を招かれて始まったのが小鹿田焼と言われ、二つは兄弟窯とも言われます。
土地が近いこともあり、装飾技法(とびかんな、打ち刷毛目など)など共通する部分もありますが、
陶土の性質の違いにより、形や土の色などに相違が見られます。
手しごとでは、40軒あまりある小石原焼窯元の中から、太田哲三窯のうつわをご紹介しています。
小石原焼の名工と呼ばれた太田熊雄さんの三男に生まれた太田哲三さんは、
有田の窯業高校を卒業後、太田熊雄窯で一職人として働きます。
「湯呑やら茶碗やら、数物(かずもの)しか作らせてもらえなかった」と当時を振り返ります。
数物は、作品作りや大物作りとは異なり、同じ物をいくつも作るという繰り返しの仕事です。
この繰り返しの仕事によって哲三さんが身につけたのは、高いロクロ技術でした。
哲三さんの器は、どれを取っても、使いやすく、形、重さなどに絶妙なバランスが感じられます。
熟練の技術と長年の経験、そして信念からこそ生まれる仕事でしょう。
日々の食卓で、毎日使える、使いたくなるうつわばかりです。
哲三さんの技術は息子の圭さんにも受け継がれ、
日常に寄り添い、実用的で、暮らしの中で活躍するうつわ作りに、
親子二人で取り組まれています。