温泉津焼・森山窯
日本海に面して東西に伸びる島根県の、ちょうど中心あたりにある温泉津(ゆのつ)。
古くから山陰道の宿場町、港町としてかつて栄えた、その名の通り温泉が湧く小さな町です。
狭く入り組んだ地形に、民家や温泉宿がひしめき合っています。
石見地方と同様に良質な陶土が採れ、登り窯の築造に適した急斜面に囲まれたこの土地では、
江戸時代中期〜後期頃から水甕をはじめとした様々な生活雑器が生産され、
湯泉津の港から北前船を介して各地へと運ばれたと言われます。
遺産として遺された登り窯が往時を今に伝えます。
この湯泉津の地に1971年に窯を開いたのが、森山窯です。
森山窯の当主・森山雅夫さん。
柳宗悦らとともに民藝運動を牽引した陶芸家・河井寛次郎の元に弟子に入ります。
「いいつくり手よりもまず立派な人間になれ」と教えられ、
京都の河井寛次郎の工房に住み込みで働き、よく可愛がられたそうです。
その後倉敷の陶芸家・武内晴二郎に師事したのち、出身地である島根に戻り、
湯泉津で独立されました。
森山窯のうつわ
森山さんの堅実な仕事ぶりは、そのものからよく感じ取ることができます。
まず、しっかりとしたつくり。丁寧な仕事です。
急須やポットの口は、しゅっとまっすぐと伸び、端正な形。
液体のキレもよく、森山さんの技術の高さがわかります。
また、森山さんならではの色彩も魅力です。
深い藍色の瑠璃釉、澄んだ青の呉須釉、モスグリーンの並釉など。
釉薬の研究者としても名高かった河井寛次郎の技術を引き継ぎ、
森山さんの探求によって生み出されたもので、いずれも美しいです。
随所に森山さんの個性が感じられるものの、決して嫌味がなく、
使い手に寄り添って作られているのが大きな魅力だと思います。
毎日使っても飽きがこない、食卓を豊かに彩る器です。
手しごとでは、森山さんの作る日常使いの器を中心にご紹介しています。