大分県との県境に近い、福岡県南東部の山あいの地に位置する小石原。
小石原焼の産地として知られますが、この地でガラス工房を営むのが、太田潤さんです。
太田潤さんは、小石原焼の窯元・太田哲三さんの次男に生まれます。
兄の圭さんは、哲三さんの元でやきもの作りに打ち込む一方で、
潤さんが志したのはガラス職人でした。
じっとしていられない性分で、ロクロの前に座り続ける仕事は向いていないと感じていたこと、
昔から家にあった小谷真三さんの倉敷ガラスや、イランやメキシコのガラスに改めて目が向き、
この道にすすんだ、と語っています。
5年間修行のため沖縄へ。
その後福岡に戻り、憧れの小谷さんの図録の巻末にあったという窯の模式図を見ながら、
なんとそれだけで窯を自作し、工房を建て、ガラスを吹きはじめます。
廃瓶や工業製品のガラスを再利用して材料に用いる、再生ガラスの仕事に取り組みます。
△工房の片隅に積み上げられた廃瓶
小石原焼の名工として知られる祖父の太田熊雄さん、父の哲三さんのうつわを見て育ち、
今も参考にしているという潤さん。
潤さんの作るガラスは、気取らず素朴な雰囲気で、
日々の暮らしで安心して使える、温かみがあります。
多少の歪みなども見られますが、そんな不完全な要素がありつつも、
潤さんが培った感覚から生まれる力強い造形が、
人を強く惹きつけるのではないでしょうか。