北国の焼きものの産地は、それほど多くありません。
冬場の厳しい寒さにより土が凍ってしまうためで、陶土などの原料も、
他の地方に比べて良質なものが得難かったようです。
秋田県大仙市にある楢岡焼は、江戸時代末期頃から続く焼きものです。
古くは甕をはじめとした大型の農具など、民具を中心につくられました。
現在は、6代目の小松潮さんが窯を営みます。
独特の青白い色は藁灰などを主原料とした海鼠釉(なまこゆう)です。
東北地方の焼きものによく見られるもので、鉄分を多く含んだ土に、
藁灰や木灰などを原料とした釉薬をかけて、耐水性をもたせるものです。
土に含まれる鉄分と釉薬が反応することで、独特の青白い色が生まれるとともに、
焼成によって複雑な変化を見せ、それが魅力となるのです。
元は北国の素朴な民陶だった楢岡焼。
地元で採れる陶土・原料を用いて、古来続く技術を維持しながらも、
現代の暮らしに寄り添ううつわ作りに今なお取り組んでいます。